7月のテーマ「打水」を詠む
森本薫
大阪府
打水やなじみの客の遠会釈
<黛まどか 選評>
夕暮の京都。開店前のひとときです。料理の仕込みも終わり、後は玄関先をきれいに掃いて水を打ち、客の来店を待つばかりです。店主でしょうか、仲居さんでしょうか、水を打ちに外に出てきました。すると偶然馴染み客が通りかかったのです。少し離れてはいましたが、「遠会釈」に親しみが感じられ、それだけで日頃の店との関係がわかります。なんと涼し気で粋な光景でしょう。
安田蝸牛
千葉県
打水に京の街角締まりけり
さくら貝
熊本県
水打つて女将の顔となりにけり
- 水打ちて灯りこぼるる先斗町(朗夢草/京都府)
- 水打つていよよととのふ先斗町(山名凌霄/京都府)
- 打水や駒下駄の音カラコロと(カワサン/大阪府)
- 水打って打って灯ともす先斗町(きりひとは/東京都)
- 板前の前掛白く水を打つ(キートスばんじょうし/兵庫県)
<黛まどか 総評>
「京都×俳句プロジェクト」国内版最後の俳句募集のテーマは「打水」でした。京都の人はとにかくよく水を打ちます。もともと町も路地もよく掃除されきれいに保たれていますが、そこに水が打たれると清浄感がいっそう増し、暑い京都にも涼しさが感じられます。何気ないことですが、日本人がずっと続けてきたこと。これこそが「文化」だと私は思います。「おもてなし」にもいろいろありますが、店(或いは一般家庭)を訪ねてくる客にとって、一番最初のおもてなしがこの「打水」です。どの句にも、客をもてなす主の心や、打水の後の町の清々しさがよく表現されていて、涼し気な景が広がっていました。
皆さま、昨年の立秋から一年間、毎週素晴らしい句をありがとうございました。これからは「世界からの投句」と合流します。すでに世界30か国以上から「いのち」をテーマに俳句が寄せられています。日本からも投句していただき、今後は「世界オンライン句会」で世界の人々と縁を結び、オンライン句会でご一緒しましょう!これからもご投句をお待ちしています。
感謝を込めまして
黛まどか
今月の優秀句に選ばれたみなさまへ
優秀句(最優秀・優秀・入選)に選ばれた皆様には、京都にちなむ賞品を贈呈させていただくと共に、黛まどか主宰のオンライン句会にご招待させていただきます。以下のリンクよりご連絡先をお知らせください。
黛まどか主宰・オンライン句会
開催の予定
2021年9月