9月のテーマ「虫の声」
渡辺輝夫
栃木県
遠ざかるやうに近づく虫の声
<黛まどか 選評>
草むらでさまざまな虫が美しい音色を奏で、秋の夜の情趣をいっそう深めています。秋の虫がすだく様子を「遠ざかるように近づく」と把握した作者。たしかに虫の声はそのように聞こえます。俳句は「発見の文学」であることをあらためて思わされる一句でした。
戸山まこと
東京都
会長の虫おしだまり虫合
中西杏
千葉県
あだし野の夕暮早し虫の声
- 宿坊を夜の底にして虫時雨(陽光世/神奈川県)
- 終電を降りれば虫の声のなか(如月かのん/新潟県)
- 虫時雨湯上りの髪すぐ冷えて(万結/東京都)
- 桂川渡り離宮の虫の声(よしこ/京都府)
- 虫の音や城址へ厚くふりつみぬ(しゃれこうべの妻/兵庫県)
<黛まどか 総評>
虫の声と言えば秋の夜の風情をすぐにイメージしますが、今回の投句には「虫合」を詠んだ諧謔句や恋の場面を想像させる句など、興味深い句が並びました。また、「あだし野」や「桂離宮」など京都の地名を詠み込んだ句は、その地の歴史や風土に虫の声を重ねて、奥行きのある句になっています。
今月の優秀句に選ばれたみなさまへ
優秀句(最優秀・優秀・入選)に選ばれた皆様には、京都にちなむ賞品を贈呈させていただくと共に、黛まどか主宰のオンライン句会にご招待させていただきます。以下のリンクよりご連絡先をお知らせください。
黛まどか主宰・オンライン句会
開催の予定
2020年12月 または 2021年1月